東京家庭裁判所 昭和40年(家)12618号 審判 1966年7月07日
国籍 中華民国台湾 住所 東京都
申立人 高昭良(仮名)
国籍ならびに住所 申立人に同じ
未成年者 高委正(仮名) 外一名
主文
本件申立を却下する。
理由
本件申立の要旨は「申立人は株式会社住友銀行から金三〇〇万円を借受け、これの担保として申立人高昭良、未成年者高委正、同高博利が共有する別紙目録記載不動産に抵当権を設定するについて未成年者らのために特別代理人の選任を求める」というのである。
本件関係人はいずれも中華民国の国籍を有する中国人で日本に住所があり、本件について当裁判所がその管轄権を有することは明きらかであり、本件申立事項は親子間の法律関係の性質を有するものと解されるから母の本国法たる中華民国法を準拠してこれを決すべきものである。
ところで中華民国法によれば、本件のような場合親子間に利益相反関係ありとして日本民法第八二六条に定めるような特別代理人を選任しなければならない旨の規定は存在しないし、かえって、同国民法第一〇八六条第一〇八八条によれば、母は未成年の子女の特有財産について管理権をもち、かつ法定代理権を有する旨規定し、この親権行使については同法第一〇九〇条が最近の尊親属又は親属会がこれを糾正する趣旨を規定する。以上の規定を総合すると本件のような場合であっても法定代理人である父母は未成年者のために適法な代理行為ができるのであって、あえて特別代理人の選任を要しないものと考えるのが相当である。また、本件の場合日本民法を適用して特別代理人を選任すべき法律上の理由も、また充分の必要も認められない。
よって本件申立は理由がなく却下することとして主文のとおり審判する。
(家事審判官 野田愛子)